すかいらーく株に重荷

4ヵ月半ぶり安値、株主優待でコスト増 客足の低迷も響く

2017/8/25付日本経済新聞 朝刊

 

24日の東京株式市場で、すかいらーく株が4カ月半ぶりの安値をつけた。前日比4円(0.24%)安の1600円と、4日続落で終えた。9日に発表した2017年1~6月期連結決算(国際会計基準)が苦戦を映し出し、投資家が収益の先行きに懸念を強めている。

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 「想定外だった」。同社が1~6月期決算を発表した後、多くの市場関係者が声をそろえた。営業利益が128億円と、前年同期比6%減少したためだ。人手不足を背景に人件費が4%増えたことは、市場にとっても想定の範囲内。減益の一因として注目されたのは、株主優待の費用だった。

筆頭株主である米投資会社ベインキャピタルが、保有するすかいらーく株の一部を売却。受け皿となった個人株主は昨年末時点の2倍となる25万人に増えた。一方、同社は6月末の株主に対する優待の付与額を3倍に拡充。約6億円の費用として計上し、利益面での重荷になった。

想定外の事態は、同社が抱える課題を浮き彫りにした面がある。優待による6億円の減益要因を吸収できない事業基盤の弱さだ。1~6月期は2%の増収となったが、新規出店の効果が大きい。既存店では客数が減少し、売上高を21億円押し下げる要因となった。

いちよし経済研究所の鮫島誠一郎氏は、足元の外食業界について「客数減を客単価の上昇で吸収しようとする構図が鮮明」と指摘する。すかいらーくも例外ではない。

同社は様々なブランドを展開し、事業ポートフォリオを広げてきた。食材調達などの観点でリスク分散効果が働くが、市場では「サイゼリヤなどと比べてブランドが確立していない」(国内運用会社のファンドマネジャー)との声がある。

低価格のイタリア料理店とのイメージを築いたサイゼリヤは7月まで14カ月連続で既存店売上高が増加。客数も5カ月連続で前年同月を上回り、競合他社と対照的な状況が浮き彫りになった面は否めない。

すかいらーくの予想PER(株価収益率)は16倍程度と、競合するサイゼリヤの約21倍やロイヤルホールディングスの約37倍を下回る。「割安」ではあるが、市場の期待が低いとも言える。

すかいらーくの顧客動向のデータを活用したメニュー開発や、物流の共通化などへの評価は高い。1~6月期には利益の重荷となった優待が呼び水となって、株主が店舗で食事をとる可能性もある。「将来的な増収効果は未知数」(モルガン・スタンレーMUFG証券の篠崎真紀アナリスト)との指摘はあるが、すかいらーくは優待券500円に対して2倍弱の増収効果があるとそろばんをはじく。

ただ、中長期の視点での成長には売上増は欠かせず、客数の増加も重要だ。消費者に運営する店舗に行きたいとの動機づけを与え、新たな顧客を獲得できるのか。投資会社の下で生まれ変わり、いま独り立ちしつつあるすかいらーく。挑むべき次のハードルは高い。

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